教育education

アメリカの教育システム


教育精神と教育改革

【教育精神】

歴史的背景

1600年代、アメリカ東海岸に移り住んで来た人々は、「聖書を読むことはキリスト教徒の義務である」と、教育の必要性を唱えた。この考えに基づき、マサチューセッツ州は47年に公教育を法律に定めた。しかし一般的には子供の教育は重要視されず、裕福な家庭の子供のみが私塾に通ったり、家庭教師を付けるなどして教育が施されていた。

1800年代に入り産業革命が起こり始めると、経済を推進させる、より生産的で創造力豊かな労働人口を生み出すための教育を要求する動きが活発になる。南北戦争後には民主主義の発展とともに、教育は社会に欠くことのできない要素であると人々が認識し始めた。

教育信条(American Values in Education)

自力で生活を築き上げてきた移民の国アメリカでは、教育の向上はコミュニティーによるという考えが根底にある。教育信条として下記項目が掲げられている。

  • 公教育は無料でなければならない。
  • 公教育はすべての人に平等で万人に開かれていなければならない。
  • 公教育はいかなる宗教、信条からも自由でなければならない。
  • 公立学校の運営は、学校の所在する州政府、地方政府に委ねられなければならない。
  • 保護者は学齢期の子供に義務教育を受けさせなければならない。
  • 学校教育は単に基礎教育にとどまらず、子供達の心身の成長を助け、一人ひとりの能力を最大限に伸ばせる場でなければならない。

【教育改革】

1960年代のアメリカでは、ベトナム戦争や人種問題などの社会背景の下に、生徒の学力低下が指摘された。そこで人間的な教育を取り戻すための「Humanizing Schools /Education」が起こり、生徒の適性・能力・関心を最大限に生かすことを強調した。この運動は中退(Drop Out)を減少させたが、学力低下を食い止めることはできなかった。

70年代中頃には、新たな動き「Back to the Basics」が起こった。読・書・算を基本とする基礎学力の習得が学校教育に必要不可欠な要素であると強調され、規律重視の教育が見直されてきた。

80年代から90年代にかけて強化されている教育改革の目標は、基礎学力の向上、中退率の減少、教育環境の良質化を中心とする。また、幼児教育の重要性も見直された。

1990年代には教育計画推進に連邦政府が関与し、教育政策に力を注いで教育内容の基準化・共通化を図る動きが一層明確になり、「教育スタンダード」が定められ、これに合わせた教育が各州で行われることが優先されるようになった。

2010年には、各州の教育専門家によりK−12年生の英語、読み書き、数学の共通した教育内容の基準を定めるCommon Core State Standards (CCSS)が策定され、アラスカ州、ネブラスカ州、テキサス州、フロリダ州、ヴァージニア州等を除く各州で採用されている。

教育行政のシステム

【仕組み】

アメリカの連邦政府は、教育政策を統括する権限を持たない。これは、文部科学省が全国規模で統制力を持つ日本と大きく異なる点である。連邦行政府の中で教育を担当する教育庁(Department of Education)は、教育のごく基本的な方針を決めたり、各学校の特別なプログラム(英語を母国語としない人のための英語教育/ESL、母国語と第二言語で教科を教えるバイリンガル教育、特殊教育)や図書館などの学校設備に対して財政援助を行うのが主な役目である。

教育庁の下にある州の教育庁・教育委員会(Board of Education)が必要出席日数、教員資格、カリキュラム内容などのガイドラインを決める。州のガイドラインに基づいて基本的な教育指針を定めるのは、大都市を統括する教育局、あるいは中・小都市を管轄する郡教育庁で、その下に各学校の実質的教育行政にかかわる学校区がある。

【学校区 School District】

学校区の行政システムは教育委員会と学校局から成り、それぞれの学校区は前述のガイドラインを基に学校の設定を独自に行う。教師や職員の採用は校長の任務であることがほとんど。校長は現場の教師も面接官に登用し、より即戦力になる人材、より適任な人材を採用することに力を尽くしている。学校局は予算、人事、教育計画、総務など、学校区の教育活動を実質的に運営している。

【公立校の財源】

地域に住む人々の意見が反映されるように、公立学校の運営は、州政府、および地方政府が担っており、公立校の主な財源は州からの補助金と地域住民の不動産税から成っている。従って、高級住宅地域がある学校区は、税収入が多く、学校予算を多く取ることができるため、良い地域は良い学校区となっている場合が多い。

義務教育と就学制度

義務教育期間は学年ではなく年齢で定められており、州によってその期間は異なる。通常、6〜7歳から高校までの12年間としているが、早期就学が児童の学力向上につながると考えられ、4〜5歳の児童を対象とした公教育の場が増えている。

5歳未満の幼児は、ナーサリー(Nursery)やプリ・スクール(Pre-School※)などで幼児教育を受けることができる。あるいは託児所(Day-Care Center)に幼児を預けることもできる。4〜5歳児は日本の幼稚園に当たるプリ・キンダーガーテン(Pre-K)やキンダーガーテンに入園するが、これは小学校に併設されている場合が多い。

近年、幼年教育の重視から、公立学校で3歳児向けのプログラム(ニューヨーク市では3-Kと呼ばれる)を実施している地域もあり、今後さらに幼年教育制度の充実が見込まれる。

就学制度も学校区によって異なる。日本の学期制と同じ6・3・3制以外に6・6制や8・4制などがあり、学校の呼び方も様々である(図1参照)。そのため学年は小学校1年から高校3年までを通しで1年生(1st Grade)-12年生(12th Grade)と数えていく。高校では大学と同様にfreshman(高校1年 / 9年生)、sophomore(10年生)、junior(11年生)、senior(高校4年 / 12年生)と呼ばれることが多い。また、日本のように年齢による学年規定がなく、それぞれの成熟度を考慮して学年を決めることもある。

日本人がアメリカで義務教育を受ける場合は、現地公立校(Public School)、チャータースクール(Charter School: 公立校と同じように州や自治体の税金で成り立っている。講師と生徒の家族、自治体の運営による認可独立校で、School District には属さない)、現地私立校(Private School)と週末を利用した日本語補習校がポピュラーである。また、カリフォルニア州、イリノイ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州とグアムには全日制日本人学校がある。学校は子供の性格、滞在年数、そして入国年齢などを十分に考慮して選ぶことを勧める。

図1 アメリカの教育システム

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