生活living

《CAREGIVING&NURSING》海外で安心して働き続けるために


日本に残す高齢家族の日常生活を支える

ある日突然、日本からの緊急電話

 日本に残して来た高齢の親が、病気で倒れて緊急入院したと知らされる。海外赴任中であれば、そんな事態に遭遇することは起こり得る事象だ。このような危機に対して、一体どのような管理をすれば良いのか?

 親御さんの世話・介護の問題は、働く人々にとっては常に存在する問題である。

「これらの問題が顕在化しない限り、日々の生活リズムが崩れる事はありませんが、残念ながら顕在化のリスクは全く予測がつかず、一旦それらのリスクが顕在化すると、大変な苦労が迫ってくる事も想像に難ありません」と、「NPO法人 海を越えるケアの手」(略称シーケア)の 代表理事・会長の勝部一夫さんは語る。

「私共は海外に暮らす日本人の方々が、安心して日常生活を送り、かつ赴任地での業務に専念できるよう、内地に残された高齢の親御さんの日常生活を支援するために、2002年6月に日本で初めての試みとして発足された団体です」。

 2005年以降は国内外を問わず、健常者から要介護5の重篤な方まで、介護保険に拘る事無く、クライアントのあらゆる要請に対応する事を前提に活動を行っている。ワークライフバランス活動の主要課題が「育児産休」から「介護問題」へと変遷すると言う世の中の流れを受けて、会員数は急激に増え、法人会員にいたっては、現時点で80社を越えているという。

 変わった名前のNPO団体、一体何をしてくれるのか?

 「一言でいえば、安心して働き続ける為に、仕事と親御さんの世話・介護の両立を支援する団体です」そう答える勝部さん。

 原則として、ホームヘルパーのような直接のサービスや支援サービスなどの提供はなく、そのかわりに、高齢者の方が暮らしていく上で必要な事を、なんでも立案・段取りを行っている。「高齢者の方の暮らしに必要な、全ての事をご本人に代わって手助けするという事で、高齢者の方が暮らしていく上で必要な事は、何でも段取りを行います。例えば『急な入院で、手助けする人手が無い』『老いた親の為に介護保険を申請したいが、遠くに住んでいるので申請が出来ない』…等々、この様な事態に対応してくれるサービスや支援者を探し出します」。

 直接高齢者に接する担当者は、社会福祉士・保健師・看護師・介護福祉士・ケアマネジャー等々、全て有資格の専門職。蓄積されたノウハウをもとに、介護に留まらない広範囲の高齢者支援を、ケースごとの丁寧な検討でアドバイスを提供している。

 専門職の業務を支えるシーケア事務局は、現在社会福祉士・看護師・ケアマネジャーの3職種の有資格者が常駐し、バーチャルに地域包括支援センター(2006年4月から設置され始めた介護保険に関わる新組織。高齢者のよろず相談支援窓口)と同等の機能を持たせている。

 こういった同社のサービス提供を受けるには、法人・個人とも会員へのご登録が必要となるが、年会費を払えば、日々の相談や、アドバイスの提供は無料となり、法人会員に関しては、従業員の個人での年会費負担なくサービスの提供を受けることができるので、福利厚生としてとりいれる企業も多いようだ。

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勝部 一夫

勝部 一夫
所属
特定非営利活動法人海を越えるケアの手
肩書
代表理事・会長
URL
http://www.seacare.or.jp/

慶應義塾大学経済学部卒業。住友金属工業㈱に入社後、営業・販売管理・秘書業務等幅広く経験し、主に同社主力製品の継目無鋼管輸出業務を担当、同社ウイーン事務所長、欧州事務所長等を歴任。三菱住友シリコン㈱(現 ㈱SUMCO)常勤監査役を退任後、2005年より現職に移り、海外駐在経験を生かして、仕事と介護の両立を支援するNPO活動に従事。