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帰国生大学入試の概要


外国において日本の教育制度以外の教育を受けた生徒を対象に、特別枠で選抜を行う入試が帰国生入試である。「帰国生入試」「帰国生徒特別選抜」「外国学校出身者特別選抜」「海外就学経験者入試」など、その名称は大学により様々であり、受験資格、出願書類なども大学により異なる。

帰国生入試の実施については、1. すべての学部・学科で実施、2. 一部の学部・学科でのみ実施、3. 実施しない、の3通りの大学がある。大学が帰国生入試を実施する理由は大きく2つあり、1つは外国において教育を受けた帰国生に日本の大学進学の門戸を開くことであり、もう1つは帰国生を受け入れることにより大学の活性化や国際化を図ることにある。

【受験資格】

「外国において学校教育における12年の課程を修了した、あるいは修了見込みであること」が帰国生入試の基本的な受験資格となる。また、帰国して日本の学校に編入学した生徒にも受験資格を認めている大学がある。受験資格は各大学がそれぞれ認定しているので、大学毎に確認しなければならない。特にポイントとなる項目は次の3つである。なお、学部・学科によって条件の異なる大学もある。

  1. 保護者同伴が必須条件か
    保護者同伴の海外滞在であることを条件とする大学(東京学芸大、九州大、東京理科大など)と単身留学生の受験も認める大学(東京大、大阪大、慶應義塾大、早稲田大、関西学院大など)がある。
  2. 海外の学校での在籍年数
    2年以上とする大学が一般的だが、3年以上とする大学(立教大など)、1年で受験を認める大学(東洋大、京都外国語大など)がある。
  3. 卒業後または帰国後の経過年数
    2年以内もしくは1年以内とする大学が一般的である。

【国家試験等の統一試験】

大学により統一試験(国際バカロレアやアメリカの教育制度によるTOEFL®・SAT®など。表1参照)の合格証明や成績表の提出を求める大学がある。統一試験の扱いは大学によって異なり、大きく3つに分けられる。1. 提出が必須の大学、2. 受験していれば提出しなさい(あるいは提出が望ましい)とする大学、3. 提出の必要がない大学、である。「アメリカ合衆国の教育制度によるもの」に対する指示を補足すると、TOEFL®の他に「SAT®」のみの成績を求める大学や「SAT®に加えSAT Subject TestsやACT」の成績を求める大学があるなど、その指示は大学により異なる。今般のSAT®の改変にともない、慶應義塾大学が2023年度入試から「SAT Essay」と「SAT Subject Tests」の提出を廃止するなどの変更が発表されているので、各大学の入試情報を確認してほしい。また、教育制度に関わりなくTOEFL®のスコアの提出を必須とする大学・学部もあるので注意が必要である(表2参照)。出願にあたって基準点を明示する大学もある。

表1 国家試験等の統一試験の例

■ アメリカ合衆国の教育制度によるもの
TOEFL®(Test of English as a Foreign Language)
SAT® ・ACT
※ 大学・学部により求めるものが異なる。

■ イギリスの教育制度によるもの
GCE(General Certificate of Education)
※ 大学によりGCE Aレベル3科目以上もしくは2科目以上などの指示がある。

■ ドイツの教育制度によるもの
アビトゥア(Abitur)

■ フランスの教育制度によるもの
バカロレア(Baccalaureat)

■ 国際バカロレア(IB)の教育制度によるもの
国際バカロレア資格証書(International Baccalaureate Diploma)

表2 TOEFL®の受験が必須の大学・学部例

東京大(IELTSも可)・東京外国語大(IELTSなども可)・京都大・大阪大(理、工、基礎工)・横浜市立大(IELTSなども可)・学習院大(経済)・慶應義塾大(IELTSも可)・国際基督教大(IELTSも可)・上智大(神除く、IELTSなども可)・聖心女子大(IELTSなども可)・法政大・早稲田大(学部によってはIELTSなども可)・関西学院大(経済、商、総合政策 ※経済、商はIELTSも可)

一方、お茶の水女子大のように統一試験の成績を求めない大学もある。割合で言えば「1. 提出が必須の大学」のほうが少数派ではある。しかし、統一試験を準備できれば受験できる大学の幅を広げることができる。また、統一試験の成績も含めた書類審査で、第1次選考を行っている大学もある(東京大、京都大経済学部、慶應義塾大など)ので、志望大学が統一試験に対してどのような指示をしているかを調べておく必要がある。

【提出書類】

出願に際しては、各種の書類や証明書が必要となる。滞在国でしか準備できないものもあるので、それらの書類はできる限り海外滞在中に用意するのがよい。厳封を求められる書類もある。

  1. 卒業(見込み)証明書【Certificate of Graduation】
    卒業証明書が用意できない場合は、卒業証書(Diploma)の写しを提出。その際、正しくコピーされたもの(Certified True Copy)であることを証明する学校印を必ず押してもらう。
  2. 成績証明書【Transcript】
    学校からのオリジナルを提出。高校卒業までの3年間分が必要。
  3. 在籍証明書【Certificate of Attendance】
    学校からのオリジナルを提出。入学(転入)年月日および卒業年月日が明記されていることが必要。
  4. 推薦状【Recommendation】
    大学によっては学校長が作成したもの、などの条件がある。大学所定用紙への記入を求める大学がある。在学中(卒業前)、早めに教員に依頼するとよい。
  5. 海外在留証明書
    保護者同伴の海外滞在を出願条件とする大学に提出。保護者の所属機関や企業が発行。基本的には、本人の在留期間と保護者の在留期間の両方が証明されていることが必要。
  6. 統一試験等の成績評価証明書
    大学に試験事務局より直接スコアを送らなくてはならない大学がある。

その他、高校のカリキュラム等が記載された「学校要覧」、パスポートの写し、レポート(志望理由書など)の提出を求める大学がある。ボランティアや課外活動の証明書、高校などからもらった賞、自分が載っている新聞記事など、高校時代の成績や活動を証明できるものも持ち帰るとよい。

【試験時期】

帰国生入試は、早い大学で8月下旬に始まり、翌3月まで延々と続く。主要私立大学の多くが9月・10月に、難関国立大学の試験が2月下旬に集中している。10月〜12月に受験できる国公立大学もある。

【選考方法】

帰国生大学入試は、概ね3つの面から審査される。書類審査、学科試験、面接試験である。

書類審査
大学により書類審査の取り扱いは異なる。必要書類が完備されているかどうかをチェックするのみの大学もあれば、提出書類の内容を海外での学業成績とあわせて厳密に審査する大学もある。国家統一試験のスコアも含めて第1次選考を行っている大学もある。

学科試験
文系学部では、外国語・小論文(国語)の2教科が一般的だが、小論文だけの大学もある。理系学部では、数学・理科を中心に小論文や外国語が加わることもある。また、小論文のみとする大学もあるが、小論文試験の内容が英語や数学・理科の場合があるので注意が必要である。文系、理系を問わず、英語の試験は行わず、TOEFL®やIELTSの成績を利用する大学が増えている。

  • 〈英語(外国語)〉
    英文和訳、読解・要約、和文英訳などが出題され、英語力(外国語力)とともに日本語力が問われることが多い。
  • 〈小論文〉
    テーマ型(与えられたテーマについて意見を展開する)や文章読解型(長めの課題文章を読ませた上でそれについて論評させる)論文が出題される。出題の多くが海外の経験と何らかの形で絡むように出題されているのが帰国生入試小論文の特徴である。
  • 〈数学・理科〉

理系数学では、数Ⅰ・数Ⅱ・数Ⅲ・数A・数Bから出題されるが、農、薬、看護学部などは、数Ⅰ・数Ⅱ・数A・数Bを範囲とすることもある。2月下旬に行われる試験では、一般選抜と同じ問題を課す大学もある(合否の判定基準は一般選抜と同一ではない)。

面接
面接は日本語で行われることが一般的であるが、外国語(ほとんどが英語)による質疑応答が行われる大学もある。海外生活の成果、学業成績、志望動機、大学入学後の目標と展望などが、日本語の会話能力とともに問われる。理系学部では、数学や理科の知識を問う大学もある。

グローバル入試・総合型選抜など
帰国生入試の他に、グローバル入試や総合型選抜(AO入試)、自己推薦入試の中で帰国生を募集する大学がある。また、国際バカロレア(IB)資格を取得の者に出願資格を与えるIB入試を実施する大学が増えている。

小論文の学習法

代々木ゼミナール教材研究センター主幹研究員
土生 昌彦

帰国受験では小論文を課す大学が多く、その対策に不安を抱く帰国生も少なくありません。ここでは小論文の学習をどのように始めればよいか、その「はじめの一歩」についてアドバイスしておきましょう。

1. 日本語力の養成

帰国生小論文の半数近くは「課題文型小論文」です。そこでは一定の長さの課題文を読み、その内容を踏まえて自分の意見を述べることが求められます。したがって、まずは基礎的な知識力、読解力、表現力を身につけておきましょう。具体的には常用漢字の読み書き、現代文の問題演習、現代文の本文や新聞の社説などを用いた要約練習(200〜400字程度)が効果的です。とくに新聞の社説の要約練習では、読解力・表現力に加えて、時事的な知識も身につくので、一挙両得です。また、ことわざや四字熟語などの国語知識を身につけるには、国語知識全般をコンパクトにまとめた「国語便覧」(第一学習社、大修館書店、数研出版など)を手元に置き、知らない言葉や表現に出会ったら、積極的に調べる習慣をつけておきましょう。

2. 社会的な問題への関心

小論文で問われるのは、現代社会で関心を集めているテーマが大半です。近年では新型コロナウイルスのもたらす社会的な影響、地球環境問題(温暖化、SDGs等)、情報化(SNS、インターネット)、教育(日本と滞在国の教育の比較)、日本社会の問題点(少子高齢化、人口減少問題)などが数多く出題されています。これらに対応するには、日頃から新聞やニュースに目を通し、社会的な問題への関心を高め、理解を深めておく必要があります。滞在国の社会問題について意見が求められることもありますので、日頃から時事的な問題を自分の問題として考える姿勢をもってください。

3. 海外経験の文章化

帰国生小論文の特徴は、与えられたテーマについて「海外経験を踏まえて」意見を求められることが多いところにあります。そこでは考える素材にふさわしい海外経験をコンパクトにまとめる作業が必要です。経験ばかりを長々と書いてしまうと「作文」になってしまうので、入試頻出テーマである教育や異文化理解、グローバリゼーションなどについて、自分の経験を200字程度で簡潔にまとめる練習をしておきましょう。

具体的な書き方としては、第1段落で「印象的な海外経験」を簡潔に示し(200字程度)、第2段落で「その経験の中に含まれる一般的・社会的な問題」を示し(200字程度)、第3段落で「その問題の解決策」を示す(200字程度)という3段落構成をとれば、論理的な思考力、構成力をアピールすることができます。このように段落構成をあらかじめ考えた上で、自分の海外経験を簡潔に示し、それについて自分の意見を掘り下げていけば合格レベルの小論文を書くことが可能になります。

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代々木ゼミナール(監修)

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