生活living

《CAREGIVING&NURSING》海外でできること、遠隔介護、サービス


海外在住、パンデミック、自身の生活事情など、様々な事情で親族の介護ケアができない人も多い。日本に住む親が高齢を迎え、介護問題に直面したとき、帰国するべきか?まず何をしたらよいか?病気にかかったときの医療ケアは?──といった悩みは尽きない。米国に住みながら自分は何ができるか、介護サポートやサービスを通して様々な角度から探ってみた。

海外在住者も安心の介護ケアサービスとは?

検査方法を取り入れ、確実かつ迅速 あらゆるものがグローバル化し、IT技術の向上が進む現代、遠隔介護の準備やサービスの手配もある程度簡単にできるようになった。デジタルヘルス分野においても、シニアに向けた医療ケアや介護の方法にも少しずつ選択肢が広がりつつあり、遠隔診療、遠隔介護をサポートするサービスも増えてきた。

米国からまずは相談を

日本は介護保険制度があるため、1割〜3割の自己負担で介護サービスを受けられる。しかし、厳格な利用基準により、提供されるサービスも限定されてしまうため、多くの人が介護保険外サービスを利用している。介護保険外サービスは自治体や民間企業が提供しており、サービス内容は充実しているが、掛かる費用も企業によっては様々で、介護保険が適用されるサービス、適用外のサービスで何を必要とするか、どういったサービスがあるのか、数ある情報の中から選択しなければならない。市町村の窓口や米国在住者向けに情報提供を行う窓口で相談もできるが、各申請や手続きも複雑で不安になることも多いだろう。

一般社団法人ハースは、日本の野村不動産パートナーズや専門企業と協力し、米国在住の日本人に向けた「サロンドハース」という相談サービスを提供している。在宅介護問題、介護資金の相談などの他、実家の処分や相続など不動産関連の情報提供を行っており、米国は、NPO法人Azuna Service Centerとの連携で現地受付窓口を設置している。NPO(特定非営利活動法人)の「シーケア」は、様々な事情で介護ケアが近くできない人のための高齢者サポートプラグラムを提供している。病院、介護施設などの手続き、また介護保険の申請手続きなど、看護師、社会福祉士、ケアマネージャーなど専門職の支援担当者が代行してくれる。

サロンドハース 
https://www.facebook.com/hearth.world

シーケア
http://www.seacare.or.jp/

主流になりつつある在宅看護
介護事情と現状

米国でもベビーブーマーが高齢化するに従い、ナーシングホーム(介護付き老人施設)やシニア向け住宅の増設などの取り組みが急ピッチで進められている。高齢者向けの介護対策は、世界全体で大きな課題として関心が高まっている。米国は、重度の介護や看護などを必要とする人でナーシングホームやケア付き住宅に入居できる人は限られており、費用が高いことや施設不足といった問題もあり、在宅介護を行う人が増加している。米市場調査会社のCBインサイツのレポートによると、米国の在宅医療サービスの市場規模は2022年の時点で3600億ドル以上に及ぶという。日本も*2025年には65歳以上の高齢者が3657万人に達し、国民全体の約4割に到達すると予想されている。さらに、国民全体の6割が自宅での療養を望んでいるという調査結果がでている。高齢化が急速に進む中、施設の拡充や地域サポートの整備が追いついていない現状もあり、在宅医療や介護の割合が圧倒的に多くなっている。(*厚生労働省)

海外からの介護サポート

海外在住者が日本に住む親族にできることは限られているが、テクノロジーが普及している今現代で、サポートができることはある。米国の医療緊急システムテクノロジーのリソースを提供しているmedicalert.orgの提案を参考にいくつか例を挙げてみた。

① 病院の検査予約や診療予約

物忘れが激しい、または認知症を患う方のためにグーグルカレンダーなどで代わりに病院の予約を管理して、それを日本にいる他の家族と共有もできる。また、病院から本人に直接リマインドの連絡が可能かどうかも確認してみるとよい。

② ビデオチャット

帰国した際にPCやスマートフォンでビデオチャットができるようにしておくと便利。顔を見て話しをすることによって顔色や話す様子からリアルタイムで健康チェックもできる。お互い顔を見ることで安心感も生まれる。

③ 地域サポートのリサーチ

自宅の近くのホームケア施設やケアマネージャーを調べて連絡をしてみる。どのようなサービス施設があるのか把握できたり、現時点で必要でなくとも、いざ必要になった時に役立つ。

④ 家のメンテナンスの手配

もし親の住居で補修や修理が必要な箇所があれば、事故や自然災害を防ぐために予め対策を行っておくと安心。また、ハウスクリーニングサービスの利用も、オンラインで海外から手配することが可能なので、まずはリサーチを。

⑤ 公共料金などの支払い管理

公共料金や保険などの毎月の支払いを代わりに行う、口座振替やクレジットカード支払いなどに切り替え、自動引き落としができるように手配する。また、金銭の管理や手続きが困難であると判断したら、家計の支出をアプリなどで管理することも可能。

⑥ 食事デリバリーサービスの手配

シニア向きのお弁当宅配サービスをオンラインで手配することもできる。

参考資料:https://www.medicalalert.org/

IT化が進む介護・医療サービス

介護を行う家族の高齢化、仕事との両立が難しい、感染症等の流行、家族が海外もしくは国内でも遠方に住んでいるといった様々な事情からITを活用した介護・医療サービスが注目されている。IT化された機器やサービスは「どこでも」「いつでも」簡単に使えて、さらにコスト削減、パーソナライズ化といった利点がある。特に、介護する人の生活や健康を守り、かかる負担の軽減を可能にしてくれる。専門的な医療や人的サポートを要する介護は遠隔で行うのは難しいが、モニタリングなどの介護をサポートするサービスやアプリを利用することで少しでも負担を減らすことが可能だ。米国でも高齢化が進むアジア市場を視野に入れたビジネス展開を行っているベンチャー企業も増えており、「遠隔医療」、「遠隔介護」は大きなテーマとして取り上げられ、今後の成長がますます期待される。これらのサービスやアプリもリハビリを必要とする人、医療ケアが必要な人、障害を抱えている人などそれぞれの健康状態によって使える機能やサービス内容、また条件が異なるので予め入念なリサーチが必要だ。


《オンライン診療・医療相談サービス》

海外から利用可能なオンライン診療・医療相談サービスなどもある。代理で治療方法や病院を決めるとき、また、処方されている薬などについて詳しく知りたい場合は、こうした相談サービスを利用するのもよい。「Doctorfellow(doctorfellow.net)は、日本の病院に在籍する診療科33科の200人以上の医師にオンラインで相談できる。

海外滞在・在住者向け医療相談アプリ
● ヨクミル

「ヨクミル」も同様に日本人の専門医に医療相談できるサービスを提供しており、レントゲン写真や患部の画像を見ながら相談できたり、アプリでは気軽にテキストもできる優れものだ。

● CLINICS
オンライン診察アプリ

オンライン診療ができるアプリ。アプリから予約して保険証画像や検査結果などを送付してオンラインで診察してくれる。キャッシュレス決済も可能。

LINEドクター

LINEデオ通話を通じて医師の診療、お薬の処方、配送までワンストップでできるオンライン診察サービス。


在宅医療をサポートするデジタル医療サービス例

・オンライン診療
・モニタリング
・在宅ケア管理
・薬の管理
・通院支援


《見守り・セキュリティ》

高齢者の一人暮らしを常に見守る人が必要。できれば近所に住む家族や友だちなどが頻繁に様子を見に訪問できれば良いが、状況によってはそれも難しい場合がある。その場合でもモニタリングシステムがあれば24時間、海外からも遠隔で見守ることができる。

モニタリングシステムは家族の安全を守るだけでなく、緊急時に早急な対応ができ、緊急アラートを鳴らせば病院等に迅速に連絡ができる。また、GPSと接続して認知症などの患者の行動モニタリングや外出時に迷子になった方の追跡もできる。

● HOME ALSOK
みまもりサポート
www.alsok.co.jp

壁に設置したボタンを押すだけで体調が悪いときなどALSOKのガードマンが駆けつけてくれてどこにいても連絡が届く。登録した持病やかかりつけの病院を救急隊員に伝えるので緊急時も迅速な対応が可能。有料契約が必要だが、ライフスタイルやファミリータイプ、様々な状況に合わせたパッケージから選ぶことができる。

《コミュニケーション》

● アマゾン Echo Show 8,980円(amazon.com

内蔵カメラにアクセスして部屋の様子を確認。画面で、声で、対応するスマートホームデバイスを操作。アレクサに話しかけるだけで電話やビデオ通話もできるので高齢の方でも簡単に利用できる。相手が何も操作しなくても一方的に呼びかけられる機能があるので、心配なときいつでも呼びかけて会話もできる。音楽、ショッピング、映画鑑賞なども楽しめるのでとても便利だ。

● Romi会話AIロボット 4万9,280円 / 他に月会費980円(amazon.com

家庭用の会話AIによって自然な会話ができるコミュニケーションロボット。認知症予防効果も注目されており、シニア世代に人気。癒やしやストレス軽減にもなる。自宅に訪問して、設定や使い方レクチャーを行う「Romi訪問設定サポート」提供している。お薬を飲む時間など「話しかけ」機能も設定できて、脳トレゲームなどでも遊べる。起動状況も記録できるので見守りの役目もしてくれる。

《健康管理をサポートするアプリケーション》

● Life360
子供の見守り、家族と位置情報共有アプリ

家族のリアルタイムの位置情報を非公開の地図上で表示。チャット機能もあり、移動履歴も確認できる。

● 血圧ノート
血圧変化を記録!自動でグラフ化

血圧を記録して管理アプリ。数値をグラフ化して体重や脈拍、歩数、睡眠時間、お薬の管理もできる。記録はメールで送信できたり、家族とシェアも可能。血圧の測り忘れを防ぐお知らせ機能もついている。

● 家族をつなぐ介護ノート

家族間で毎日の介護の記録を共有できるアプリ。どのような状態か、その日の様子など細かい情報を家族同士で共有できる。

楽天シニア

体重計。血圧、心拍数、睡眠時間を計って家族でシェアができる。イベントや講座にも参加できたり、ウォーキング施設でチェックインしたら楽天ポイントももらえて歩数も管理。

《お薬管理アプリ》

● マックス─ピルリマインダー

お薬の飲み忘れ防止アプリ。服用する時間を設定するとリマインダーが電話でお知らせしてくれる。

お薬ノート─服薬・薬歴管理

服用通知を設定してメッセージを受信。カレンダーで服用履歴が確認でき、家族と服用スケジュールが共有できて管理が可能。病院名や科などカテゴリ別でお薬管理もできる。

《緊急時アラート》

エンリッチ見守りサービス

NPO法人エンリッチのLINEを利用した安否確認サービス。通知がされて安否を知らせるためにOKボタンを押すだけ。24時間安否の確認が取れなくなったら登録された家族に連絡がくるようになっている。高齢者だけでなく、独居の人の見守りサービスとしても利用できる。

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海外に住んでいても代わりに遠隔操作できたり、記録を確認して知らせてあげたり、TV通話なども気軽にできる時代になったものの、離れていると、どうしてもできることは限られている。各種サービスから最適なものを選ぶためにも体調や病状、さらに住む地域の介護情報を深く理解して知識を得ることが必要になってくる。本人の希望や意見を尊重するためにもじっくり話し合うことが大切。家族や兄弟、介護専門職の担当者と相談をしながら、お互いに後悔のない満足がいく介護生活を送りたい。

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