教育education

アメリカの教育システム


様々な教育プログラム

アメリカではすべての子供に教育を受ける権利を保障し、またそれぞれの個性の尊重と自主性の伸長を教育の指針と考え、一人ひとりの生徒の能力と資質に合った指導を目指している。

【英語教育】

移民の国アメリカでは、英語力が不十分な生徒(ELL生徒:English Language Learner Student)の教育機会均等を守るためのプログラムを設けている。例えばニューヨーク市では、ELL生徒のためにESL(English as a Second Language)プログラム、TBE(Transitional Bilingual Education)プログラム、デュアル・ランゲージ(Dual Language)プログラムを設けており、学校には新しく入学したELL生徒の保護者を対象に、これらのプログラムについての説明会を開くことが義務付けられている。新入生の保護者は最初にHLIS(Home Language Identification Survey)を受けることが義務付けられており、この結果によって、生徒のLAB-R(Language Assessment Battery-Revised)と呼ばれる英語テスト受験の必要性の有無が決定される。更に、このテスト結果において、生徒の英語プログラムの必要性が検討される。

ニューヨーク州では、ELL生徒がNYSESLAT(New York State English as a Second Language Achievement Test)において一定ラインの成績を修めると、これらのプログラムから一般の英語クラスに移ることができる。その後も言語によっては必要に応じ母国語でのサポートを受けることが可能。

ESLプログラム

1960年代から、英語を母国語としない生徒達のための特別指導として、公立校で広範囲に採用されてきた。

  • プログラムの目的
    – 聞き取り、話し方、読み方、書き方の指導による効果的な伝達能力の育成・英語音声の指導
    – 語彙を増やす指導
    – 基礎や概念を理解させる専任教師がいる場合と、専門の教師が学校区内の学校を必要に応じて巡回する場合などがある。
  • 指導法
    ESLは英語での正規のクラスについていけるようになることが最終ゴールである。
    授業はすべて英語で行われるが、生徒の母国語によるサポートが受けられる場合もある。学校や日常生活など生徒の身近なものを教材に使って、自然に英語に親しませていき、生徒の理解力に応じて徐々にクラスのカリキュラム内容と並行した指導を行う。

TBEプログラム

基本的には英語で授業を行うが、教科指導に英語と生徒の母国語の両方を使用することによって、正規の授業内容に遅れないようにする。生徒の学力と英語力が向上するに連れて、徐々に母国語での指導度合いが減少し、英語での指導度合いが増加する。

デュアル・ランゲージ・プログラム Dual Language Immersion Program

指導内容の半分を英語で、半分を英語以外の言語で行う。このプログラムはバイカルチャル、バイリンガルの生徒育成を目指し、英語を母国語とする生徒にも、その他の言語での指導が行われる。州により異なるが、主流の言語は中国語、スペイン語で、時折、ドイツ語やフランス語、日本語もみられる。算数授業を外国語で行うなどしてより実用的な言葉を学ぶカリキュラムが多い。

【GAT教育】

特に学力の高い生徒のための教育で「Gifted and Talented Education」と呼ばれる。

  • Acceleration……実力に合った学年に飛び級させる。
  • Enrichment……学年はそのままで、生徒の能力が伸びるような指導、課題を施す。
  • Homogeneous Grouping……同等の学力の生徒を同じクラスで教える。

【特別支援教育】

一般に、アメリカの特別支援教育(Special Needs Education)は、「支援を必要とする子供達のための教育(Education for Challenged Children)」を指していう。

アメリカの法律では、支援が必要と判断された21歳までの児童、生徒達に対し、個々の必要に応じた教育指導方法を無料で施すことを各学校システムに義務付けている。

歴史

  • PL (Public Law) 94-142:全障害児教育法 Education for All Handicapped Children Act(EHA)
    75年に制定され、アメリカの教育システムに「すべての子供は平等に公教育を受ける権利を持つ」という明確なメッセージを送った。
  • PL 101-476:The Individuals with Disabilities Education Act(IDEA)
    90年に制定され、これまでのEHA法の再確認とともに子供達の教育の権利の保障範囲が広げられた。
  • IDEA ’97, 2004 
    1997年と2004年にそれぞれ修正案が可決され、現在では乳幼児から21歳までの障がいを持つ人のそれぞれのニーズに合わせた特別な教育と関連サービスが提供されている。

アメリカの特別支援教育は1人1人に合わせたIEP(Individual Education Plan)により通常クラスへIntegrated(併合)し、最終的には社会の一員としてコミュニティーに貢献できるようになる事を目標としている。その為、特別支援クラスは普通学校内に設置されており、日本のように別々ではない事が多い。(聾唖学校など特別支援教育のみを施す学校も少数だがある。)スペシャルニーズを持つ生徒とそうでない生徒が同じクラスで学ぶ Integrated Co-Teaching class (ICT)またはCollaborative Team-Teaching(CTT)と呼ばれるクラスは、全ての生徒に平等な教育の機会を与え、どちらにもよい相互作用を生む目的もある。

特別支援教育のプロセス

  1. Referral(委託)
    子供の成長・学習過程において、支援の必要な兆候または事実が見られれば、査定を地域の特別支援教育委員会に委託する。
  2. Evaluation / Assessment(査定)
    保護者が持参した児童に関する資料に加え、必要な分野の専門医や専門家により、特別支援教育を受けたほうが良いか、またどのような支援が必要かを診断する。
    児童の年齢が低い場合ははっきりとした診断はされない事もあり、特別支援教育が必要か必要でないかのみの診断の場合もある。
  3. Recommendation
    診断の結果報告を基に、特別支援教育の必要性を判断する。
  4. IEP会議
    特別支援教育の必要性が判断されたら、会議を開きIEP(Individualized Education Program)を作成する。
  5. NOREP(Notice of Recommended Educational Placement)
    IEP会議の後にNOREPが発行され、保護者がサインすることにより、12か月間IEPのImplement(実行)が有効になる。
  6. Implementation(実行)
  7. 個人面談(Progress Report, Parent Teacher meeting)
    学校は半期に一回、プログレスレポートを保護者に提出する。それにより、IEPの目標を修正するなどして、より生徒一人一人に合うIEPに近づけ、カリキュラムを作成する。その成果や課題はParent-Teacher meetingにて話し合われる。
  8. Annual Assessment (年間査定)
    州によっても異なるが、4半期に一回ずつ、もしくは半期に一回ずつのアセスメントを行い、プログレスレポートやIEPの目標変更、プランの改善につなげる。最終的には次の学年へつなぐための資料とする。アセスメントの内容は、コモンコアスタンダード(Common Core Standard)にのっとって行われる。

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