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知っておきたいアメリカ暮らしのマナー


アメリカの葬儀

様々な宗教を持つ民族が住む多民族国家アメリカでは、個人のバックグラウンドやそれぞれの宗教によって異なったしきたりがあるので、一概に正しい「葬式のマナー」を述べるのは不可能だが、一般的には次のようなことを参考にしてほしい。

【お通夜への参列】

キリスト教の場合、人が亡くなった最初の夜は、身内とごく親しい友人だけでお通夜(wake)をする。日本のように、故人の自宅で行われることはほとんどなく、フューネラル・ホーム(Funeral Home)と呼ばれる葬儀店で行うケースが多い。時間も夜通し掛けることはなく、遺族にお悔やみを伝えて、棺が開いていたら故人に最後のお別れをするだけ。その時、故人の宗派に合わせる必要はなく、それぞれ自分の宗派でお祈りをする。仏教徒であれば、手を合わせて頭を下げるだけでよい。お悔やみの言葉は例1のようなものが適当。翌日は友人、知人が集まって最後のお別れをする。

【お供えの花と香典】

キリスト教では知らせを受けたら、生花を遺体の安置されている葬儀店、もしくは葬儀の行われる場所に送る。その時必ずカードも添え、”With deepest sympathy.”や、”In loving memory.”と追悼の気持ちを込めたメッセージを入れサインをする。

ユダヤ教の場合、特に厳格な宗派の人々にとっては、お花は喜びのシンボルになる。そのため献花を気にする人もいるので、原則的に送らないケースのほうが多い。

また献花の代わりに、故人やその家族の希望によって、がんソサエティなどの団体に寄付金を送る場合もある。

【葬儀への参列】

一般的にキリスト教では、葬儀は葬儀場付設のチャペル、または教会などで行われる。参列するのは親族と親しい友人に限られるようだ。まず牧師が故人のためにミサを行い、続いて告別式となる。これは普段の礼拝と同じようなかたちだ。牧師、または故人と親しかった人が故人を偲んでスピーチをする場合もある。自分がキリスト教でない場合、信者達が賛美歌を歌ったり、お祈りをしている時は、ただ静かにしているだけでよい。

ユダヤ教の葬儀では、故人を弔問客に見せることはせず、24時間以内に埋葬するのがしきたりだ。これはユダヤ教では、人が死ぬと土に帰ると信じられているからだ。故人が友人、同僚であれば、一般的には葬儀には何も持参しなくても構わないが、既婚女性はスカーフか帽子が必要なこともあるので、とりあえず持参するに越したことはないだろう。

厳格なユダヤ教徒の家庭では、葬儀が終わると遺族は一週間家にこもって喪に服す。その間彼等は一日3回故人のために祈りを捧げる。

【会葬者の服装】

葬儀に参列するときの服装は、黒でなくてはいけないといった決まりはなく、地味な色なら何でも構わない。女性は地味な色とデザインのスーツかワンピースで、アクセサリーは控え目に。男性はダークスーツに黒のネクタイが共通スタイルだ。ちなみに黒一色のスーツは、葬儀屋の格好なので気を付けること。

例1 お悔やみの言葉

  • I’m very sorry.
  • You have my sympathy.
  • Please accept my sympathy.

*亡くなった人が特に親しい間柄であった場合、こうした言葉の後に、故人を称える言葉、”He (She) was a really nice person”などを付け加えるとよい。

様々なウエディング—似ている点と異なる点

人種と宗教が入り交じるアメリカでは、それに応じて結婚式の形式も様々。しかし、式場への入場、退場の仕方などは共通したところも多い。一般的には次のようなことを覚えておくと便利だろう。

  • 教会・式場での席順……伝統的な教会での結婚式では、新婦側のゲストが祭壇に向かって左側に、新郎側が右側に着席し、通常アッシャー(Usher)※1がゲストを席まで案内する。新婦の母親が最後に着席し、式が始まる。自宅や屋外で行われる略式の結婚式では、ゲスト席が半円型にセットされていることが多い。
  • 入場……フォーマルな式では、ブライズメイド(Bridesmaid)※2がまず最初に入場、そしてメイドオブオーナー(Maid of Honor)※3フラワーガール(Flower Girl)※4、リングベアラー(Ring Bearer)※5の順となる。新婦とその父親は腕を組んで、その後に続く。新郎とベストマン(Best Man)※6、聖職者は祭壇のところで待っている。
  • 退場……伝統的な形式では、新婦が新郎の右腕をとって出口に向かって歩く。その後をフラワーガール、そしてメイドオブオーナーとベストマンが腕を組んで続き、ブライズメイドとアッシャーがともに退場する。人数の少ない結婚式では新婦と新郎が口づけをしたところで式の終わりとなり、まず聖職者が2人に祝辞を述べ、家族達もそれに続く。そしてゲスト達がそれぞれにカップルにお祝いの言葉を述べる。
  • レシービングライン……式の直後、新婦新郎とそれぞれの母親、メイドオブオーナーが、教会の玄関口に列になって、退場していくゲスト達からお祝いの言葉を受ける。通常、父親とブライズメイドはこの列に加わらないことが多い。この時、お祝いの言葉とともに新婦の装いを賞賛することを忘れずに。しかし話し過ぎて列の動きを止めないように。飲み物を手に持って列に加わることは絶対に避ける。

様々な結婚式

  • シビル・セレモニー(Civil Ceremony)…… 通常、少人数で、パブリックホールや個人宅、裁判官執務室などで簡単に行われる。新婦と新郎、シビルオフィシャル、立会人がいれば結婚が成り立つ。
  • カトリック教……ローマ・カトリック教の結婚式は神父によってとり行われる。婚礼ミサはある場合とない場合がある。新婦の父親が娘の腕をとって側廊を歩き、祭壇で新郎に引き渡す。
  • ユダヤ教……オーソドックスなものから新しい形式まで様々。通常、結婚式の間、フッパ※7またはウエディングキャノピーと呼ばれる天幕の下に、新郎新婦とラビ※8が入り儀式を行う。結婚指輪は石の付いていないシンプルなもので、新郎が「You are sanctified to me with this ring, according to the law of Moses and Israel」という誓いの言葉を述べながら、新婦の指にはめる。新郎新婦が同じグラスからワインを飲み、最後に新郎が布でくるんだそのワイングラスを踏んで割る。これは破壊されたユダヤ教の神殿を象徴している。
  • イスラム教……あまり形式にこだわらない。家族、親戚、友人、宗教の指導者達がモスクに集まり、新郎新婦が誓いの言葉を交わす。ゲスト達の服装や色に関しての規則はないが、モスクへ入る前には必ず靴を脱ぐ。通常、式の最後にゲスト達の間で「salaam aleikum」(peace be with you)という言葉が交される。式の後、ホテルなどで披露宴が行われることも多い。ここではイスラム教に従った食事が出され、アルコールドリンクは一切出されない。
  • クエーカー教……通常、家族団らんのような暖かい雰囲気がある。クエーカーの結婚式には聖職者は出席せず、ゲスト達が式場に集まり、思い思いの席に着席する。式の進行を説明する人がいて、その簡単な説明の後、数分の沈黙がある。そして新郎新婦が起立し、誓いの言葉を交した後、再び沈黙となる。この間、祝辞を述べたい人は起立する。その後、先に進行を説明した人が立ち上がり、近くにいる人と握手を交すと、これで式が終了となる。ゲスト達は結婚証明書へのサインを勧められる。これにサインするのに、クエーカー教徒である必要はない。式後、披露宴が行われる。

ウェディング用語:1. アッシャー(Usher):ゲストを式に案内したり、花婿の付添いで身の回りの世話や、結婚式の進行のサポートをする男性。新郎の兄弟や友人など近い間柄の未婚男性を2名から5名ぐらい選びお願いする(新婦側と人数を揃える)。衣装は新郎が用意する。2. ブライズメイズ(Brides maid):とは、花嫁の付き添い人、立会人として、結婚式で花嫁の側に立つ女性たちのこと。主に花嫁の友達、姉妹、親族で、未婚の女性が務める。3. メイドオブオーナー(Maid of Honor):ブライズメイドの中でも一番新婦と親しい、代表的な立場の女性。4. フラワーガール(Flower Girl):結婚式の時に花嫁の後ろ(あるいは前)を歩き花をまいていく女の子(主に幼女が多い) 5. リングベアラー(Ring Bearer):小さな子どもが新郎新婦の結婚指輪を運ぶ役割を担う。6. ベストマン(Best Man):アッシャーの中から代表を選んで、中心的な役割をする人の事を言う。7. フッパ(Chuppah):ユダヤ教の結婚式の時に用いる覆い。8. ラビ(Rubbi):ユダヤ教の聖職者

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