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応急処置の方法


桑間雄一郎医師(東京海上記念診療所)の監修による緊急時の対処法を紹介する。ただし、これはあくまで一般的な方法であって、医療従事者のアドバイスが得られる場合は、そちらを優先すること。

事故・発作!!緊急チェックポイント

  1. 意識があるか確認
    相手の肩を軽く叩きながら、耳元で相手の名前を呼ぶか、「大丈夫ですか?」と大声で尋ねる。相手の意識がない場合や呼吸をしていない場合は、すぐに助けを呼ぶ。
  2. 救急車(911)を呼ぶ
    その場に一人しかいない場合は、後述の脈の確認後に心臓マッサージを直ちに開始し、大声で助けを呼ぶ。可及的速やかに救急車を依頼する。二人以上の場合は、一人が救命処置をしている間に、もう一人が助けを呼んだり、近くの飲食店などから救命処置用の道具、AED(自動体外式除細動器)や呼吸マスクを借りてくる。
  3. 脈があるか確認
    脈を確認するには、大人や子供の場合は首の頚動脈に、幼児の場合は手首の動脈に触れる。脈は常にやさしく触れる。決して強く圧迫してはならない。脈が触れにくい人もいるので、必要ならば5〜10秒間かけて脈を探す。脈が見つからなければ、脈がないと判断し、すぐに心臓マッサージを開始する。呼吸が止まっている場合でも、心臓マッサージで胸を圧迫することで人工呼吸の効果も兼ねるので、呼吸の状態は気にしなくてよい。
  4. 出血しているか確認
    大けがをして傷口から多量に出血し、止まらないような状態かどうかをまず確認する。出血していたらすぐに止血し、その部位を高くして寝かせる。けがによってショック状態(体温が低下し、脈拍が弱まり、顔色が青くなる状態)にある時は、下肢を高く上げることで血圧が回復することがある。
  5. 緊急の医療インフォメーション
    加入している保険のカード、緊急時の身分証明書、アレルギーのカードなどは、常に携帯するようにする。また、救急車が来た後は、救急病院の名前を聞いておき、ファミリードクターに連絡できるようにする。

表1 緊急用品チェックリスト

□ アルコール(Alcohol)
□ 安全ピン(Safety Pins)
□ ガーゼ(Gauze)
□ 毛抜き、ピンセット(Tweezers)
□ 解熱剤(fever reducer / antipyretic)
□ 氷袋(Ice Bag)
□ 消化薬(Digestive medichine)
□ 咳止め(Cough Medicine)
□ 咳止めドロップ(Cough Drops)
□ 体温計(Thermometer)大人用&子供用
□ 鎮痛剤(Pain Medicine)
□ 軟膏(Ointment)
□ のどの痛み止め(Sore Throat Lozenges)
□ はさみ(Scissors)
□ バンドエイド(Band-Aid)
□ 便秘薬(Laxative)
□ 包帯(Roll Bandages)
□ 過酸化水素(Hydrogen Peroxide)
□ 綿棒(Cotton swab, Q-tip)
□ 目薬(Eyedrops)

■ 緊急電話(911)のかけ方

▶STEP 1
受話器を取り、911をダイヤルする(公衆電話の場合は、コインを入れなくてもかかる)。

▶STEP 2
警察のオペレーターが出るので、“ I need an ambulance(救急車をお願いします)”と伝える。

▶STEP 3
住所(Address)と電話番号(Telephone Number)を聞かれるので、救急車に来てほしい住所(事故現場など)と現在かけている電話の番号を伝える。

▶STEP 4
EMS (Emergency Medical Service)に電話が転送され、オペレーターから以下の質問をされるので、できる限り正確に答える。

Q:Who is sick(病人はだれか)?

A:主人(Husband)/妻(Wife)/子供(Child)/友達(Friend)/老人(Elder Person)などの要領で答える。

Q:How old(病人は何歳か)?

A:病人の年齢を答える。

Q:What happened(どういう状況か)?

A:意識がない(Unconscious)/呼吸をしていない(Not Breathing) /息苦しい(Short of Breath)/胸が痛い(Chest Pain) /薬を飲み過ぎた(Drug Overdose) /倒れた(Fell)/陣痛が起こっている(Labor) などの要領で答える。

▶STEP 5
EMSのオペレーターにも、現在かけている電話の番号を伝える。

▶STEP 6
必要な時には、救急車が到着するまでの間、電話でCPR(心肺蘇生法)やFirst Aid(救急処置)の指導を受ける場合もある。EMT(Emergency Medical Technician)やパラメディックス(Paramedics:医療補助者)から質問を受けたら、難しい単語を使う必要はないが、できるだけ正確に答える。EMSと救急車間の連絡により、病人の情報が到着前に救急車職員に伝えられる。

▶STEP 7
電話を切るように(Please hang up the phone)指示があるまで、電話は切らないこと。

▶STEP 8
可能であれば、救急職員をすぐ誘導できるように、交差点やアパート、ビルなどの前に人を立たせておく。

※地域によっては911にテキストで連絡ができるが、可能な限り電話する。

【注意事項】

  1. 病人の実情を報告するため、救急車が来る前に警察が様子を見に来ることがある。また、消防士が応急処置をする場合があるので、消防車が先に到着する場合もある。
  2. 救急病院へ行く際、現金や貴重品は必要な分だけ持ち、余分な物は身に着けないようにする。救急処置室には、けが人だけではなく、付き添いの人を含め、いろいろな人が来ているため、盗難に遭うケースもある。
  3. 緊急時に家やアパートの管理を頼める家族や友人を決めておくとよい。特に1人暮らしの場合は、救急車で運ばれる際の戸締まりに注意する。
  4. 臓器提供の意思がある場合は、家族や主治医に伝えるか、弁護士に書類を作成してもらう(リビング・ウィル:Living Will)。ニューヨーク州の場合は、運転免許証の裏にサインする欄がある。
  5. 911で頼む公共の救急車は、最寄りの病院へ行くので、命にかかわるような重症でない限り、即座に治療が受けられない場合が多い。そのため、利用者が指定する病院へと運んでくれる民間の救急車サービスが普及している。

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桑間 雄一郎 医師(監修)

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所属
東京海上記念診療所(マンハッタン診療所)
肩書
院長
住所
55 East 34th Street 2nd Floor New York, NY 10016
TEL
212-889-2119
FAX
212-696-2406
URL
https://www.mountsinai.org/locations/msd-japanese-medical-practice/japanese