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歯並びは、いつでも綺麗にできる


急がず、ベストなタイミングを見極める

虫歯、根幹治療、歯列矯正と、そのライフステージに合わせて歯の悩みは続く。歯列矯正を専門とする出口先生の元には、6歳の児童から80歳を超える高齢者まで、幅広い年齢層の患者が訪れる。特に多いのが、成人の入れ歯やインプラントといった補綴の前処置。「インプラントのために隣の歯を少し閉じて欲しい」、「この部分の隙間を広げて欲しい」などの依頼が、同じ大学病院の先生たちから寄せられ、各種エキスパートが協力しながら一つひとつのケースに丁寧に対応している。

多くの場合、新しい歯科技術や矯正装置はアメリカで開発される。また、論文の引用回数の多さではアメリカと日本人が上位を占める。とはいえ、アメリカが世界一進んだ矯正技術を持っているかといえば、そんなことはない。平均化すれば、アメリカの方が日本より少し進んでいる程度で、それを補うほどズバ抜けて優れた世界的な歯科医が、日本や韓国にはいると言う。「日本では、新しい装置が発明されても厚労省の認可が下りにくく、米国で流行中のアライナー・インビザラインも〝歯科医の責任の範囲内で〟という条件が付き、未だに正式な認可が下りていません。そんな環境下で自ら新技術を取り込み、熱心に勉強を続けて自分のものとしている歯科医は、本当に素晴らしいと感じます」。


松本歯科大学で歯列矯正の教授をしていた父親の背中を見て、自分も歯科医を目指した。ただ、自身は非常に不器用で、クラウンや入れ歯を作ったり、神経治療などの細かな作業には向いておらず、気付けば父親と同じ歯列矯正の道へと進んでいたと出口先生は苦笑いする。インディアナ大学の矯正専門分野でマスターを取得し、岡山大学で6年、東北大学で5年勤めたのち、運よく今のポジションに恵まれオハイオ州立大学に移った。

受け入れの決定打となったのは、学生時代から進めてきた「インプラント・アンカー」の研究が認められたこと。これは、歯を動かす際に使う固定元で、今では一般的な技術だが、当時はまだ誰も使っておらず最先端を行くものだった。これに関する論文をいくつも発表していたことがオハイオ州立大学への道に繋がった。

口唇口蓋裂患者や咀嚼機能、噛み合わせによる痛みは別だが、歯列矯正の希望理由の多くは審美的なものが多く、命に関わるものではない。口元が出ているから治したいという患者も、出口先生の見解では治療不要というケースも少なくない。ただし、本当に歯列矯正が必要だと判断した場合には、アメリカでの治療も選択肢に入れるべきと出口先生は強調する。それは、アメリカの歯列矯正の総費用が、日本の値段と比べて半分ほどで済むためだ。

また、アメリカ人の歯科医にかかる際に気を付ける点を教えてくれた。それは、本当にその矯正が必要なのかどうかセカンドオピニオンを取るということ。「アメリカ人の歯科医は、アジア人の小さく突き出た口に慣れていないことが多く、すぐに〝抜歯〟をして引っ込めようとする傾向があります。僕も抜歯して矯正することはありますが、抜かずにできる方法がたくさんあることを頭に置いておいてください。後は、ちょっとした歯並びの悪さであれば、いつでも綺麗にできますので、急がずベストなタイミングを見極めることも重要です」。

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出口 徹 先生

出口 徹 先生
所属
オハイオ州立大学
肩書
歯列矯正科 プログラムディレクター
住所
305 W. 12th Ave. Columbus OH 43210-1267, 4088F Postle Hall The Ohio State University College of Dentistry Div. of Orthodontics
TEL
614-247-6889
FAX
614-688-3077
URL
http://www.jlifeus.com/biz/Deguchi/index.htm

DDS, MSD, PhD。オハイオ州立大学構内に、出口矯正歯科も開院している。