医療medical

“将来の、何十万人という患者のために”できることを


最先端医療が開く明日への希望

現在の乳幼児手術には人工血管が用いられることが多く、子供の成長に合わせて生涯2〜3度の人工血管交換の必要性が生じる。この再生血管を使えば、乳児時に埋めた血管が成長と共に再生、交換のための手術がいらなくなるという。


病気がちな親の見舞いで病院を訪れることの多かった新岡医師。人の命を救うために尽力する医師たちの姿を見て、自らも医者を目指そうと決めた。特に惹かれたのが心臓外科医。その中でも最高難易度の小児心臓外科医になろうと日々研鑽を積んだ。その過程で気づいたのが、〝目の前の患者を救うことだけが医者の役割ではないのではないか〟ということ。新しい研究が開花することによって、未来の患者が救えればどんなに素晴らしいだろうと、病院の研究施設が圧倒的に多く、研究環境の整っているアメリカを目指した。


アメリカでは医療の細分化、専門化が進み、小児科の領域においても、州に1、2ヶ所程度の専門病院で全ての小児患者の手術に対応するシステムが一般的となっている。そのため、医師一人ひとりが手がける症例数も多く、若手医師やチームスタッフの技術力や能力も一気に鍛えられる。このネイションワイド・チルドレンズ・ホスピタルでも年間500例ほどの心臓手術が行われており、日本の大学病院の年間平均50〜100例という数字に比べ、10倍のスピードで経験が積み重ねられている。「日本で10年かかることがアメリカでは1年で経験できるので、日本の若い優秀な医師がアメリカを目指すのも仕方ありません。僕の研究室でも日本からの留学生を定期的に受け入れていて、動物実験を手伝うかたわらで米国医師免許を取得してもらい、その後にアメリカでトレーニングを受けるという道筋を提供しています」。

「今の若い医師に伝えたいことがあるとすれば、特に大学病院の外科医に関しては、目の前の患者さんの治療だけではなく、将来の患者さんを救うための研究にもっと真剣に取り組んで欲しいということです。患者さんを救うことが最優先です。でも、自分の手術で救えるのは年間300例、10年でも3000例ほどだと思いますので、将来の何十万人という患者を救う可能性のある研究を探し、そこにもしっかりと情熱を注いで欲しいのです」。

ハーバード大学への留学時代に始めた再生血管の開発もやっとFDAに認可され、臨床段階のフェーズ2に差し掛かっている。ここを越えれば市販化の道が開かれ、3、4年後には「この最先端医療のお陰で救われました」という声が聞こえ始めるかもしれない。その喜びの声が新岡医師の元に届く日が、今から楽しみで仕方ない。

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新岡 俊治 医師

新岡 俊治 医師
所属
ネイションワイド・チルドレンズ・ホスピタル
肩書
心臓外科医
住所
700 Children's Drive, T2294, Columbus, OH 43205
TEL
614-722-3103
FAX
614-722-3111
URL
https://www.nationwidechildrens.org

Additional information:
- オハイオ州立大学心臓外科教授