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アメリカの高齢者サービス


公的な医療保険が充実していないアメリカでは、日本のような公的介護保険制度はワシントン州(2022年から保険料の徴収開始、運用開始は2025年1月1日の予定)以外にはない。現在、日本では高齢者はアメリカに比べて手厚い保障を受けられるが、住み慣れたアメリカで老後を送る選択をする人も多い。アメリカ在住の日系米国人の3人に1人は65歳以上というデータもあり、アメリカで生活する日系、日本人高齢者は今後増加していくと思われる。

アメリカの高齢者向けの制度やサービスについて簡単にまとめてみる。

メディケア

https://www.medicare.gov/

メディケアは、連邦政府が運営する65歳以上の高齢者及び障害者のための医療保険制度で介護はカバーしない。メディケアを受給できるのは65才以上で、アメリカ居住5年以上またはアメリカ市民権か永住権保持者、または65才未満の身体障害者で一定の資格を満たす人。メディケアへの加入は、決められた申請期間内に手続きをする必要があり、申請期間は個人によって異なるので、65才になる3ヶ月前までにはソーシャルセキュリティー事務所、または保険代理店等に問い合わせる。メディケアの申請期間をのがすと、ペナルティーがかかるので注意が必要。

メディケアには入院費用をカバーするパートA、入院以外の外来医療サービスをカバーするパートB、処方箋薬をカバーするパートDとメディケア・アドバンテージ(パートC)の4つのパートがあり、それぞれに手続きが必要となる。メディケアでカバーする医療サービスには限りがあるので、自己負担分をカバーするためにメディケア・サプリメントや、メディギャップと呼ばれる民間の保険がある。

介護が必要になったら?

アメリカではほとんどの高齢者は一般の住宅やアパートに暮らし、5%がサポート付き住宅に住むという調査データがある。介護はアメリカではLong term careと言い、非医療サービスに分類されるため、メディケアやメディケイド(低所得者向けの連邦と州が共同で行っている公的医療保険制度)のカバーの対象にならず、介護費用は民間の長期介護保険でカバーするか、自己負担となる。

<在宅介護>

自宅での介護は、家族が担うか介護サービスを利用する。介護の内容により介護サービスの依頼先が異なるので注意する。

・コンパニオンケア
見守り(安否確認)サービス、家事補助、食事準備・介助、買い物サービス、服薬時間のお知らせ、外出付き添いサービス、など

・Personal Care Services(パーソナルケア)
宿泊介助、清拭(身体を拭く、部分浴)、着替えの介助、歩行補助、食事準備、買い物サービスなど

ニューヨーク、ネバダ、ミズーリ、ペンシルバニア、アリゾナ、インディアナ、ジョージア州ではFreedomCareという、介護される人が家族、親戚、友人を介護人として選び、自宅で介護を受け、メディケイドを通して介護人に賃金が支払われるサービスがある。(https://freedomcare.com/

<介護・看護施設>

アメリカのシニア施設は、高齢者ホーム、介護施設、ナーシングホー ム/スキルドナーシング施設、認知 症やホスピスなど特殊シニア施設に 大きく分けられる。カリフォルニア、ハワイ、ニューヨークなど日本人、日系人の多い地域では日系の施設や日本人、日系人が多く住み、食事や活動等に文化的な配慮があるところや日本語話者のスタッフがいる施設がある。

・高齢者ホーム/ シニアハウジング
心身ともに健康で自分で身の回りのことを管理できる人を対象とした施設。介護サービスはないが、安全面の配慮をはじめ、健康診断、看護師による一定時間勤務体制、緊急時の「ライフライン」などの設備が整っている。

・介護施設
杖や歩行器などで歩行可能だが、食事や着替えなど、非医療介護が断続的に必要な入居者対象。

・ナーシングホーム
看護を行う施設。重度の認知障害、行動障害、歩行が難しく車椅子で移動しているなど、身体上の問題がある、または24時間体制で看護が必要な入居者が対象。アメリカでの介護は非医療サービスとみなされ、介護サービスは、医療の範疇に入る一部のサービスのみ医療保険が適用される。

高齢者がナーシングホームに入居した場合、スキルドケア(Skilled care)を必 要とする状態で、かつ入居期間がメディケアの給付期間である100日間 以下のみ医療保障制度(メディケア)の対象となり、それ以外は自己負担になる。介護サービスの負担で資産を取り崩した場合は、低所得者に対して医療を保障するメディケイドが適用される。詳しくは民間の介護サービス会社やケアマネージャーなどに相談するとよい。

リタイアメントコミュニティ

アメリカには健康面に問題のない高齢者が集まって住むリタイアメントコミュニティが200以上あると言われる。郊外の町全体がリタイアメントコミュニティになっている大規模なものもあり、プールやテニスコートなどレクリエーション施設等充実した設備があり、高齢者が主体となって生活をしている。

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