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ニューヨーク市の不動産


ニューヨーク市の不動産市場は、現在、どうなっているのか。マンハッタンの直近事情のほか、住宅価格が急騰しているロングアイランドシティとブルックリンを中心に、移住目的・投資目的の目線で解説します。

 <マンハッタン> 

マンハッタン、ブルックリンの不動産売買は2021年第一四半期までは2020年からのコロナパンデミックの影響が残り売買件数はほんのプラス2%程前後での推移でしたが、第二四半期後半から鋭角V字型の回復を見せ始め第三四半期にはプラス200%までになりました。これはリーマンショック後の不動産市場でも見られなかった現象でいかにマンハッタン、ブルックリンの不動産が世界でも稀にない強さを示しているものと思われます。今後は金利動向にもある程度左右をされると思われますが力強い動きに変わりはないものと思われます。

一方でロングアイランドシティーを含めた賃貸市場はどうかと言うと、2020年に起きた郊外への逆流現象から一変をし、今度は逆にマンハッタン、ブルックリン、ロングアイランドシティーへの郊外、また他州からの逆流現象が2021年5月以降から顕著になり始めました。

賃貸価格は2020年無料レントなどのプロモーションで一旦は最大で20%前後まで落ち込みましたが、逆流の更に逆流現象が2021年中ごろから急に起こり始め、既に賃貸価格はパンデミック前に鋭角V字回復、この記事を書いている2022年3月においては在庫状況は逼迫しており、無料レント等のプロモーションは一切姿を消し、賃貸価格はパンデミック前の割高感に更に割高感を感じさせるものとなっています。完全な売り手市場です。

今後は金利上昇と共に売買がある程度控えられる反動でこの需要と供給の不均等な状況(需要が供給をはるかに上回っている)はさらに悪化傾向となり賃貸市場価格は上昇傾向が当分続くものと思われます。

 <ロングアイランドシティ>

ロングアイランドシティは、 Pepsi ColaのサインやSilvercup Studio(元Silvercup Bakery)の看板があることで有名ですが、もともとそのような製造業者や倉庫業者が多数存在した街です。周辺は以前あった倉庫をバーやレストランに改築し、おしゃれでにぎやかな街に変わりつつあります。

ここ数年住居用の高層ビルがあちらこちらに建設され、広いトレーニングジムやゆったりと寛げるラウンジ、バーベキューのできるルーフトップ、シアタールーム、ビリヤー ドルーム等を併設されている高級賃貸アパートには、ミレニアルズがこぞって入居し始めていました。

中にはゴルフシミュレーションルームが付いたアパートもあります。また、過去に何度か「最も信頼できる 地下鉄」と評価を受けた7ラインでグランドセントラル駅から1駅目から3駅目の区間という交通の便利さも人気を後押ししています。アマゾンの第二本社設立は頓挫しましたが、ニューヨーク市からの大規模な優遇措置を受けずとも、その立地の良さを考慮して移転を考える企業は多く出てくるものと思われます。

クイーンズは持ち家比率が高い のですが、このロングアイランドシ ティは少々例外となってきます。賃貸アパートの数が圧倒的に多く、価 格帯としてはスタジオサイズがドアマン無しで2,000ドル前後からスタート、売買価格では50万ドル前後からとなっています。ロングアイランドシティ全体では、現存する賃貸アパート、コンドミニアムなどを含め、今後新しく建築されるコンドミニアムなど約2万から2万5,000世帯分(実際にはもっと多くなるとの見解)の住居供給があるとされています。実は、ロングアイランドシティはリーマンショックの前あたりから再開発が急ピッチで行われていますが、アマゾン第二本社移転の話が出てきてからも、売買価格と賃貸価格相場に大きな変化はみられませんでした。しかし、このコロナ禍でやはりロングアイランドシティにも影響はそれなりに出ています。

 <ブルックリン> 

ここ数年ブルックリンで大きく話題になった案件と言えば、ブルックリン・インダストリーシ ティでしょう。ブルックリン・インダストリーシティは、1800年代後半から1900 年代前半に実業家のIrving T Bush氏(アメリカ元大統領のBush一家とは一切無関係)によって創られたといわれ、製造業者、倉庫業者、船着き場のある巨大工業地帯から時代の流れと共に、様々な人たちの手によって再開発が重ねられている地域です。現在はオフィススペース、アートスタジオ、トレーニングジム、レストラン、公園等を構えている巨大複合オフィスキャンパス の街となりました。2010年に入り、34%という高い空室率にも関わらず、不動産投資家チームが一丸となってプロジェクトを進め、NBAやBrooklyn Netsのオフィス誘致の成功もあり、人気がでてきたという経緯があります。場所はブルックリンのサンセットパークに位置していて、一般人もオフィス以外は立ち寄ることができ、おしゃれな観 光スポットとしても有名になってきました。テナントはアパレル企業、 IT企業、広告会社、アートスタジオ兼オフィス、コンサルティング会社等多種多様となっています。1980 年代にはマンハッタンのGarment Districtの家賃の半額以下だったために、アパレル業界が競って入居をしてきた名残もありますが、2000年代にIT関係企業、アートスタジオ等の需要が増えました。また、サンライズマートを中心に、日本の飲食店が軒を連ねているJapan Villageはこの街の3棟と4棟の間にあります。

周辺での住宅街は、特にブルックリンハイツとパークスロープの地域が学区もよく家族連れが好んで住む、昔からの由緒ある場所となっています。独身やカップル、または子供がいない夫婦などはレッドフック、サンセットパーク、ゴワナスなども人気の地区となっています。価格帯は、賃貸ではスタジオサイズで2,000ドル前後から、 購入では50万ドル前後からとなっています。しかしブルックリンハイツとパークスロープは、それより少々高めの価格となります。ブルックリンはニューヨーク市の一つと言えどもコロナ禍の影響はほとんど受けていません。理由はマンハッタン程住宅街は密接感がなく環境が良い為です。(環境が思わしくない場所もありますが記述をしている対象はパークスロープ、ブルックリンハイツなどの良い地区になります)

この様な地域は郊外の物件同様に非常に人気が高く値段は崩れる事なく推移をしています。

 <ブルックリン&クィーンズ投資目的の不動産市況> 

2008年から2018年の10年間の 平均売買価格の上昇率を見ると、ロ ングアイランドシティのあるクィーンズ全体では65%前後(ロングアイランドシティ単体だと80%前後の上昇)、ブルックリン全体では75% 前後となっています。価格帯で高い 場所はロングアイランドシティでは ハンターズポイントでブルックリン ではブルックリンハイツ、パークス ロープが上位を占めています。ただ、 ここ数年は頭打ちから右型下がり局 面(特にコンドミニアム)となってい ますので、これから10年を見据えた 場合、過去10年の様な上昇率を見せ てくれるかどうか投資家としては気 になる所です。 

投資物件購入の場合は出来るだけ手離れの良い新築物件を購入する事をお勧めします。理由としては① テナントがつきやすい ②メンテナンスが少なくて済む ③ 421-A Tax Abatement認可のビルがある—— ※このビルだと最初の数年間は固定資産税はゼロに近い為、より投 資効率が上がります。(421-A Tax Abatementは固定資産税減額優遇措置です。通常ですと10年から15年ですがビルによっては25年間優遇を受ける事ができます。しかしながら2年に一度20%ずつ上昇して満期には元の税額に戻りますので投資のうまみとしては最初の3年から5年くらいになります) ——などのメリットがあります。

ちなみに、ロングアイランドシティのハンターズポイントに100万ドル の新築物件を投資目的で購入、10 年間保有し投資リターンを年2.75%(管理料、固定資産税、保険、メンテナンス等の経費支払い後)とした場合は1年間2万7,500ドル、 10年間で27万5,000ドルとなり総額 127万5,000ドル(単純に100万ドル x 2.75% x 10)。一方で2019年1月22日の週の10年物米国債の利率が2.75%となっていますのでこれを10年間保有した場合、複利計算で10年後には総額131万1,652ドルとなります。一見米国債の方が投資率は高い感じですが、不動産物件にはキャピタルゲインがありますので、 10年後の不動産市場にもよりますが上述の127万5,000ドル以上の資産価値が出ているかもしれません。

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本澤 徹

本澤 徹
所属
スターツ・ニューヨーク
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NY州公認不動産エージェント(Licensed Real Estate Salesperson)
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ニューヨーク日系不動産会社スターツに勤務。マンハッタンを中心に売買、賃貸、管理を主な業務とする。