生活living

ペットのいる暮らしと動物検疫


アメリカから日本へ入国時の動物の検疫

日本に入国する動物は輸入検疫を受ける必要がある。後述の「出国前の準備」の条件を完璧に満たして日本に到着したは場合は短時間の係留で済むが、条件を満たしていないと、動物検疫所の係留施設において最高180日まで係留されることになる。環境の変化から体調を崩すペットもいるが、係留中はたとえ病気になっても施設から出してもらえないので、十分な注意が必要。条件を満たすためには、一般的に日本到着の7ヵ月以上前から準備を始める必要がある。検査の結果次第では、返送または処分されることも起こり得る。

【検疫における必要書類】

  • アメリカ政府認可の証明書……日本が推奨する証明書様式(Form AC)を入手し、獣医が必要事項を記載、その後アメリカ農務省(USDA)の裏書き(公的機関の獣医のサインと公印、所属機関名、サインした日付)を取得。
  • 狂犬病抗体検査の結果通知書……日本の農林水産大臣が指定する検査施設が発行した結果通知書
  • 動物の輸入に関する届出書と届出受理書
  • 輸入検査申請書とその結果通知書……必要な書式は日本の動物検疫所のサイト(https://www.maff.go.jp/aqs/animal/dog/import-index.html)からダウンロードできる。輸入の届出と輸入検査申請はインターネット経由でも可能。

【アメリカ出国前の準備】

次の手順で準備する。

  1. マイクロチップの装着
    動物病院で国際標準化機構(ISO)11784および11785に適合するマイクロチップを犬猫に装着する。狂犬病予防注射や狂犬病ウイルスに対する血清中和抗体価の検査のための採血、出国前の各検査時には、読み取り機でマイクロチップ番号を読み取り、個体が確認される。アメリカ農務省認可の証明書(以下、「証明書」)には、このマイクロチップ番号が記載されていなければならない。
  2. 狂犬病予防注射
    マイクロチップ装着後、狂犬病予防注射を2回以上接種する。予防注射を受ける犬猫は、生後91日以上経っていること、そして2回目の予防注射は、1回目の接種日から30日以上経過していて、かつ1回目の予防注射の有効免疫期間内であることが条件となる。有効なワクチンは、不活化ワクチンまたは、組換え型ワクチンで、生ワクチンは認められない。
  3. 狂犬病に対する抗体価測定
    2回目の狂犬病予防注射有効免疫期間内に血清中和抗体価の検査を行う。これは、獣医が署名した指定の検査申請書を同封して、日本の農林水産大臣指定の検査施設に血液を送り、狂犬病の抗体検査をしてもらうというもの。証明書には、この採血日、指定検査施設、検査結果が記載されていなければならない。これに、指定検査施設からの結果通知書を添付し、日本到着時に動物検疫所に提出する。狂犬病に対する抗体価は0.5IU/ml以上でなければならない。
  4. 採血後の経過日数
    空港での係留を12時間以内の係留検査(即日開放)にするためには、(3)の採血日から180日以上経過、かつ2年以内に入国すること。採血日から180日以上経過しないうちに日本に到着した場合、不足日数分を係留されることになる。入国前に狂犬病予防注射の有効免疫期間を越えてしまう場合は、追加接種が必要。
  5. 事前届出書の提出
    帰国40日前までに、到着予定空港を管轄する動物検疫所に動物の輸入に関する「届出書」をFAXまたはEメールで提出する。NACCS(動物検疫関連業務)を利用してオンラインで申請することも可能。届出書が受け付けられると、動物検疫所から「動物の輸入に関する届出受理書」が交付される。日本での検疫時にこの受理番号が必要となる。また、犬猫の搭載時に、受理書を航空会社に提示すること。
  6. アメリカ出国前の臨床検査
    出国前(できる限り出発前2日以内)に、狂犬病(犬は狂犬病とレプトスピラ症)にかかっていないかどうか、獣医による検査を受ける。
  7. 証明書の取得・確認
    証明書にマイクロチップの番号と(2)(3)(6)の内容がきちんと記載されているか確認し(表1参照)、日本到着時に動物検疫所に提出する。

これらの手続きを代行してくれる日系の引越業者もある。

表1 アメリカ農務省認可の証明書の主な記載事項(犬猫の場合)

  1. マイクロチップ番号(規格、番号、装着年月日、装着部位)。
  2. 不活化ワクチンまたは組換え型ワクチンによる狂犬病予防注射(注射年月日、接種獣医の住所・氏名、有効免疫期間、製品名、製造会社、製造番号)。
  3. 狂犬病ウイルスに対する血清中和抗体価の検査結果(採血年月日、採血した獣医の住所・氏名、検査施設名、抗体価。検査施設の結果通知書を添付)。
  4. 狂犬病(犬の場合は狂犬病およびレプトスピラ症)にかかっていない、またはかかっている疑いがないこと。
  5. 狂犬病以外の予防注射、寄生虫の駆除(注射・処置年月日、注射・処置した獣医の住所・氏名、ワクチンの有効免疫期間、製品名)。1日以上の係留検査を受ける予定の場合は処置すること。

【日本到着後】

日本に到着したら速やかに、到着空港を管轄する動物検疫所に輸入検査申請書を提出し、輸入検疫を受ける。ここで証明書、狂犬病抗体化検査の結果通知書およびその他の必要書類を提出する。

即日開放とならない場合、係留中の費用に関しては、到着空港から係留施設までの輸送費や係留中の飼養管理、獣医の往診、犬猫の返送・処分など全て飼い主の負担となる。

係留施設は、日本全国に空港・海港含め12ヵ所あるが、管理業者が常勤している施設ばかりではないので、事前に入国予定の動物検疫所に問い合わせたい。

日本語が通じる動物病院

<ロサンゼルス>

<サンフランシスコ>

  • Seven Hills Veterinary Hospital
    5264 Diamond Heights Blvd., San Francisco, CA 94131
    TEL: (415) 642-7200
    http://sevenhillsvet.com/
    Dr. Yuki Okada
  • Animal Care Hospital of Walnut Creek
    130 La Casa Via, Suites 103a & 103b, Walnut Creek, CA 94598
    https://achwalnutcreek.com/
    Dr. Yuka Nakamura

<ニューヨーク>

【その他の動物】

犬猫の他、ウサギや小鳥などが検疫の対象となるが、日本へ連れてくることができない動物の種類または国があるので注意したい。

ペットは家族の一員。引っ越しとなれば連れていくのが普通であるが、これが飛行機の長旅となると、ペットに掛かる肉体的・精神的負担は多大なものとなる。特に、動物が幼・老齢、妊娠・授乳中、病弱、投薬中などの場合は長旅・係留に適さないとして、日本の農林水産省動物検疫所も、渡航させることを勧めていない。やむを得ない場合は、長旅に耐えられるかどうか、事前に獣医に相談すること。貨物扱いで長時間飛行機に閉じ込められる場合の心身の負担やリスク、検疫のことなどを踏まえて、どうすることがペットにとってベストかを考えて行動したい。

動物検疫所のウェブサイトで「輸入手続きの手引書(指定地域以外)」「チェックシート(指定地域以外)」「12時間以内の係留検査(即日解放)で日本到着となる処置例」のPDFドキュメントを配布している。輸入手続きが非常にわかりやすく説明されているので、ぜひ入手したい。

動物検疫所のウェブサイト
http://www.maff.go.jp/aqs/

ペットの機内持ち込み

2022年2月現在、ユナイテッド航空、デルタ航空、アメリカン航空が条件付きでペットのキャビン持ち込みを許可している。持ち込み可能なケージの大きさは前の座席の下に入るサイズなので、小型犬か猫に限定される。年齢、犬種、ケージのサイズなど条件が設定されているので、必ず、各航空会社へ問い合わせのこと。

● ユナイテッド航空 

  • ハワイおよび指定国を除く国内線、国際線で機内持ち込み可 
  • ウェブサイトより予約可能 
  • 国内線、国際線ともに片道125ドル 

● デルタ航空 

  • ハワイおよび指定国を除く国内線、国際線で機内持ち込み可 (平均飛行時間が12時間を超えない便に限る)
  • 国内線は片道125ドル、国際線は片道200ドル 
  • 予約センターに電話で申込む  電話番号:800-221-1212

● アメリカン航空 

  • 国内線のみ機内持ち込み可、片道125ドル 
  • 予約センターに電話で申し込む 電話番号:800-237-0027(日本語)

ペット保険

人間の医療費と同じく、動物の医療費もアメリカでは非常に高額だ。事故や急病で救急病院に駆け込んだ場合、数万ドルの緊急手術のために数千ドルのデポジットを求められる場合もある。ペット用の緊急費用を積み立てる人も多いが、やはり万が一の病気や事故に備えペット保険への加入を検討しても良いだろう。いくつかの固定プランから選ぶ方式のほか、免責額や補償割合を自分で調整し、それに応じて月々の保険料が決定される方式の保険も多い。その場合、補償割合が多く免責額が低いほど、保険料は高くなる。ペットの年齢や種類により、保険料は変わってくる。年間補償に上限があるものや、病気や事故一件ごとの補償に上限があるもの、アプリで簡単に補償請求可能なもの、オプショナルでルーティーンケアをカバーするものなどいろいろ特色があるので、目的に合ったものを選びたい。様々な保険会社のプランを一斉比較できるウェブサイトもあるので利用したい。https://www.petinsurancequotes.com

代表的なペット保険(犬猫)

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