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アメリカでの車選びのポイント


アメリカで生活を始めるうえで車選びは、住まいの選定、生活インフラの整備と同様に必要不可欠なプロセスとなります。適切な車選びがその後のアメリカ生活を快適で充実したものにするといっても過言ではありません。しかし、車社会のアメリカでは、消費者に求められる車の知識や商習慣が日本と大きく異なるため、最初の車選びでギャップに苦労される方も多く見受けられます。任期やライフスタイルに合った最適な車を見つけられるよう、車選びのベースとなる基本情報、コロナ禍での自動車市場の状況も踏まえたアメリカでの車選びのポイントをご紹介させていただきます。

コロナ禍は、自動車業界にどのような影響を与えた?

2020年の新型コロナウィルスの世界的な感染拡大により、社会は、人の移動と接触を制限することを余儀なくされました。それに伴い、様々な産業がダメージを受けていますが、自動車業界も例外ではありません。特に問題となっているのが、自動車製造に必要不可欠な半導体の世界的な不足により新車の生産に遅れが生じ、供給が間に合っていないことです。(2022年3月初め現在)

自動車市場の現状

新車の供給が間に合っていないことで、ディーラーでは新車の在庫が不足し、現在、多くのディーラーの展示場スペースにおいて、これまで見たことがないほどに空きスペースが多く見られるようになりました。一部のディーラーでは、売り上げ減少の穴埋めをするために、「プレミアム」といった名目でウェブサイトに表示されているMSRP(メーカー希望小売価格)の価格から5000ドルから1万ドルも価格を上乗せして販売している店舗もあるようです。また多くのディーラーが展示場のスペースを埋めるために、こぞって中古車を仕入れるようになりました。そのため、中古車相場は、急激に高騰し、2020年3月以降、中古車価格は、39.8%という驚異的な上昇を記録しています。オンライン自動車情報サイト「Edmunds」のデータによると、2021年第2四半期の中古車の平均取引価格は2万5410ドルで、第1四半期の2万2977ドルからさらに上昇し、前年比21%増となっています。この数字は、Edmundsがこれまで公表してきた四半期の平均価格としては過去最高値となります。

自動車市場の今後の見通し

それでは、この記録的な中古車相場の上昇は、いつまで続くのでしょうか?

Cox オートモーティブ社のチーフエコノミストであるジョナサン・スモーク氏はフォーチュン誌に次のように語っています。「ボトルネックを解決し、生産不足を解消すれば、いずれは正常な価格パターンが見られるようになるでしょう。だからといって、木材のように価格が大きく調整されるようなことはないでしょう」。同氏の経済予測では、中古車価格は2022年前半まで上昇し続け、後半に若干引き下げられると述べられています。

ここでいうボトルネックとは、需要と供給のバランスを意味します。そのため、中古車相場の正常化は、新車の安定供給後になると見られています。GMやVolkswagenなど新車メーカーのCEOによると2022年後半ごろに半導体不足が解消し、新車の供給の正常化は2023年頃になるとの見通しを立てています。

前置きが長くなりましたが、先述のとおり短期的にはマーケットの正常化は見込めない中でも、アメリカでの生活において車の確保は必須となります。次にご紹介する内容が少しでも皆様の車選びの一助になれば幸いです。

購入前にしっておくべきことー日米の商習慣の違いー

日米の商習慣の違いを説明する上で前提にあるのが、新車と中古車の販売台数の比率が日本とアメリカでは真逆であることです。日本では新車の販売台数が7割、中古車の販売台数が3割なのに対し、アメリカでは新車の販売台数が3割、中古車の販売台数が7割と中古車の市場の方が圧倒的に大きいのです。その一番の要因として、アメリカでは中古車の価値が高く、なかなか価格が下がらないことにあります。統計では、新車の1年目の価格の下落幅は、2年目〜4年目を足した下落幅よりも大きいと言われています。そして3年以上経過すると価格が安定し、下落幅が小さくなります。そのため、リセールバリュー(売却時の価値)が比較的イメージしやすく、次の乗り換えを視野に入れた購入ができるのもアメリカで中古車の人気が高い理由と言えるでしょう。

このように中古車の市場が大きいアメリカでは、消費者の車に対する知識や意識も高く、さらに消費者自らが購入希望車両の整備履歴や事故歴を事前にネットで調べることができる環境もあるため(大手中古車ディーラーのウェブサイトでは、すべて開示しているところもあります)、ディーラーに来店する際にはある程度希望の車が絞れている消費者が多く、基本的には、来店当日に契約、即納車ということも当たり前の文化となっています。購入の意思がないと分かると、インセンティブで動いているディーラーのセールスマンは、トーンダウンして商談を終わらせる傾向にあることも念頭に置いておきましょう。

最後に支払い方法に関しての違いを解説します。日本では、未だに現金一括で購入する層が6割ほどいるのに対し、アメリカでは、現金一括で購入する層は全体の約1割、ローンとリースで購入する消費者が9割と言われています。日米の違いは、お金の知識に関する差も関係しているのではないかと推察します。最近では、日本でも資産運用や投資に関しての情報が色々なところで散見されるようになりましたが、お金に関する教育が早くから進んでいるアメリカでは、一度に大量の支払いをすることよりも、分割にしてその他は投資に回すのがスタンダードになっているため、ローンやリースの利用者が大多数を占めていると思われます。

これから車の購入を検討している方はどう動くべき?

先にも述べたとおり、2020年のコロナ禍以降、新車の供給が不足しており、アメリカの中古車市場は未曾有のバブルとなっています。そのため、今車を購入しなければならない人にとっては、新車の選択肢は極端に少なく、中古車においては平常時よりも高い価格となっており、少し厳しい状況と言えるかもしれません。しかし、そんな時だからこそ視野を広くもってベストな選択をすることが大切です。

先ず新車か中古車どちらを選ぶべきか?既に希望のメーカー、モデルが決まっており、さらに最新の安全装備やオプションなどを希望する方であれば新車が良いでしょう。ただ、1年目の価格の下落幅が大きいため、米国での任期が短い方は注意が必要です。特に新車でなくても良い方であれば、新車から3年〜5年落ちの車をお勧めします。理由としては、新車から3年以上経過した車は比較的価格が安定しやすいからです(注1)。また、故障の確率も1〜3年落ちでも3〜5年落ちでもほとんど変わらないと言われています。中古車と言えども、近年では技術革新によって車の耐久年数は非常に高くなっています。むしろ重要なのは、購入希望車両のメンテナンスヒストリーの事前確認と購入後のメンテナンスになります。アメリカでは日本のような厳しい車検制度もないため、維持費が安く済む代わりに、車のメンテナンスは所有者個人にすべて委ねられており、まさに自己責任になります。また、道路環境も日本とは違うことも念頭においた方が良いでしょう。アメリカの道路は、高速道路も無料で走れるところが多くメリットもありますが、その分道路は荒れているところが多く、パンクや飛び石によるフロントガラスの破損、また舗装されていない道路を多く走ることで振動によるベアリングの不良など、日本と比べて外部環境による故障リスクは必然的に高くなりますので、購入時に必要に応じてWarranty(保証)やタイヤやダラスのプロテクション・プランなどへの加入も検討することをお勧め致します。

支払い方法に関しては、新車であればリースかローンをお勧めします。ただ、リースに関してはいくつか縛りがありますので注意が必要です。先ず、1つ目が距離の縛りです。リース契約では、年間の走行距離が1万2000マイルなどに制限されており、それを超える場合はペナルティが発生します。2つ目が期間の縛りです。リース期間は、一般的に3年と設定されている契約が多く、中途解約の場合は、こちらにもペナルティが発生します。その他、傷やダメージなども状況に応じてペナルティの対象となりますので、事前にリース契約の内容を吟味したうえで判断することをお勧め致します。

中古車であれば基本的にリースがほとんどないため、ローン一択でお勧め致します。理由は、日米の商習慣の違いでも述べましたが、現在のような不安定な世の中においては、大量出費を抑えできるだけ手元にキャッシュを残し、色々な選択肢を残しておくのがセオリーだと考えます。月々の支払いにすることで残りを投資に回すことができます。ここで言う投資とはふたつの意味があり、一つは、株や債券などに投資するもの、もう一つは自分への投資になります。特に学生や駐在員など任期のある方は、アメリカでの限られた期間の滞在において、その時にしかできない経験も多くあるかと思います。その時に手元にキャッシュがないと選択肢も減ってしまいます。ローンにすることで確かに金利は発生しますが、投資によるリターンを考慮すると得られるものが多いため、ローンが組めるのであればローンをお勧め致します。

ローンを組む条件としてSSN(ソーシャルセキュリティーナンバー)とクレジットヒストリーが必須であると一般的に言われていますが、現在では外国人向けに、学歴や職歴、収入など財務状況等のデータをもとに、独自の与信基準で比較的良い金利でローンを組んでくれるフィンテック(Fintech)系のスタートアップも出てきています。それらを利用することで、ローンも組めてクレジットヒストリーも加速度的に貯めることができますので、このような新規赴任者向けローンを検討することをお勧め致します。

最後に

現状での車選びに関して先述した内容をまとめますと、既に新車で希望車両が固まっている方に関しては新車を、支払いに関しては、リースまたはローンが組める場合は、どちらかで進めることをお勧め致します。現段階で新車、中古車どちらの選択肢も持っている方であれば「価格が安定する3年落ちの車」(注2)でリセールバリュー(売却時の価格)の高い車をローンで購入することをおすすめします。

以上、コロナ禍での自動車市場の状況も踏まえてアメリカでの車選びのポイントをご紹介させていただきましたが、このアドバイスが皆様の車選びの一助となれば幸いです。また購入後のアメリカでの快適なカーライフを祈念致します。

(注1)(注2)価格の安定に関しては、あくまで新車からの経過年数による下落のみの話となり、現在の市場のバブル的な要素は含んでおりません。

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